サブプライム問題の総括

1.経済の現状

アメリカ発のサブプライムの焦げ付きは、アメリカのみならず世界の金融・資本市場に激震を走らせ、世界の金融市場を崩壊させた。
 そして今(2008年12月)現在、金融危機が実体経済に波及し、世界経済崩壊の危機に直面している。
 金融危機に対しては世界の中央銀行が協調して利下げその他によって大量の資金供給を実施するとともに影響の大きい銀行に対して銀行債務の保証、預金保護、公的資金の投入、不良資産の買い取り等の緊急政策によって危機を封じ込めようと躍起になっている。新興国に対しては国際通貨基金や世界銀行を強化して支援の体制を整えつつある。不良債権の厳格な査定とそれによる買い取りという難しい実務的問題が残ってはいるものの金融危機は峠を越しつつあるが、銀行が実体経済の危機のため貸し出しを渋って、国債保有に傾斜していることは銀行本来の責務を忘れた保身として批判されるべきである。
 一方、サブプライム問題の根本原因の一つは住宅の過剰供給ということにあるが、今の実体経済の危機の根本原因はあらゆる物の過剰供給ということにある。資本主義本国の人間は政府や企業、業界等あらゆる供給側の宣伝によって消費を煽られ、無駄な物も熱病にうなされたようにして買わされてきたわけであるが、米国の過剰な住宅供給のシステムが決壊したことによって誘引され、他の商品の過剰供給システムが世界的に決壊してきたのである。したがって、世界的に需要が縮小傾向にある現在、過剰供給が緩和されるには時間がかかることになる。各国政府による需要対策は明確な位置づけをもって実施しなければ過剰供給システムを温存することとなり、一時的な効果が見込まれたとしてもかえってマイナスの効果をもたらすこととなろう。
 日本の場合、政府はグリーンスパン米FRB前議長の「百年に一度」の言葉を物まねするばかりで何をしたいのかが見えてこないし、日銀は資金供給しかみえてこない。市場原理主義による運営の崩壊は計画経済や協同経済も必要なことを暗示していると思うが、市場と計画と協同の棲み分けと連絡、公明正大なルールを再検討して、それに向かって当面の緊急対策を講ずる必要があろう。

2.「サブプライムローン」問題の総括

(1)銀行の融資姿勢は問題であった。

 サブプライムローンとは、米国の信用力の低い個人向けの住宅融資のことだが、それ自体としては特に問題があるわけではない。信用力が低い個人に融資するわけだから融資した元利が返済されるかどうかをきちっと見定める審査力があるかないかだけのことである。審査をしっかりすればいいだけのことである。
 日本の金融機関も右へ倣へとばかりに過剰融資やはたまた過小融資の振れが激しすぎるが、一般的融資動向に流されるだけの審査眼では審査眼が落ちたといわれてもしかたがない。

(2)ローン不動産の評価を担当した不動産鑑定士は問題であった。

 不動産鑑定士はローン会社から依頼されて不動産を評価するわけだが、ローン会社の「この価額程度に評価してくれ」という要求を受け入れやすい評価方法と要求を受け入れれば受け入れるほど仕事になるということで過大融資を助長した。
 日本の場合、鑑定士の位置づけや制度が異なっている部分があるので一概にはいえないが、証券化対象不動産の評価に端的に表れているようにアメリカの鑑定評価方法を無原則的に模倣してきている、また、アメリカと同じように銀行や証券を組成したりする会社等供給側の要求を受け入れなければ仕事がこないという現実からすると他山の石とすることができるかどうか危惧される。
 ローン不動産や証券化対象不動産の評価については、「特定価格」(証券化不動産等を評価する場合の求める価格)を廃止して「正常価格」を求めるものとする。また、評価依頼の受付窓口を依頼者から独立した別個の第三者窓口をつくり、その窓口から鑑定士に評価依頼をまわすというようなシステムが必要である。

(3)不動産証券化に問題があった。

 不動産ローンを束ねて不動産証券を組成するわけだが、サブプライムローンだけ組成する証券はリスクが大きく投資家に売れないので普通の住宅ローンとサブプライムローンとを混ぜ合わせてリスクを小さくした証券を発行して投資家に売りさばいた。
 次に不動産証券と不動産証券を束ねた証券を発行して販売、更に、2番目に発行した証券を束ねて新たな不動産証券を発行するということを次から次へと新たな証券を発行した。そればかりか、不動産以外の証券と不動産証券を束ねた証券も次から次へと発行するから、結局、何がなんだかわからない証券が巷に溢れだした。また、訳のわからない証券を保証する証券までが登場してごちゃごちゃになって、証券の真のリスクが何処にあり、それがいかほどのリスクかということがわからなくなっているにもかかわらず投資家は一般庶民を巻き込んで、バスに乗り遅れては大変とばかりに怪しげな証券を買いあさった。結果、世界的な巨大証券・金融市場ができあがり、バブルのバブルが世界を駆けめぐったのである。
 そして、バブルの崩壊→世界的金融危機の発生となった。
 訳のわからない証券は発行させない・シンプルでリスクのわかる証券のみが流通するような市場に現状の証券市場や金融市場、資本市場を整理整頓しなければならないということだろう。
 日本でも新興証券市場等が淘汰・再編されつつあるが、当局や関係者はアメリカに追従する愚を反省すべきであろう。

(4)格付け機関は共犯者であった。

 格付け機関は企業等が発行する社債等の証券のリスクを格付けして、投資家の投資目安に寄与する役割をもった機関であった。
 ところが、何がなんだかわからないような証券の信用を高格付けして世界的金融危機の原因を構成した。格付け機関は証券を組成する会社のコンサルをして飯の種としながら他方ではその証券の格付けをするという利益相反行為を平然と行い、巨額の利益を得たのである。
 政府の保証があるかないかによる格付けなど百害あって一利なしと言われても仕方がないのである。格付けとコンサル業務は明確に分離し、格付け会社は格付けのみ、コンサル業務ははコンサル会社が行うとしてそこに一切の利害関係が入らないようにすべきである。
 日本の場合も、低く格付けするぞとばかりの営業トークを弄してコンサル業務の営業活動を行ってひんしゅくをかった格付け機関の話を聞いたことがあるが、日本の格付け機関もきちんと分離すべきである。また、机上での判断が主であると聞いたことがあるが、地道な実査がなければ簡単に情報操作されることとなる。

2008.12.17