現状分析

公示地を指標とすることはむずかしい
23区の住宅地最高価格を読んで

土地の価格は高いところから低いところへ波及することが多い。
27年公示地によると23区の住宅地の最高価格は、千代田区の3,150千円/u(以下同)に対して最下位の江戸川区が394、千代田区の12.5%でしかない。26年が2,960に対して386なので13.0%、価格差は開いたことになる。
千代田区の土地は2,266uなので総額は7,137,900千円、江戸川区が437uで172,178千円。比較は単価でするしかないが、売買は総額なので71億と2億では市場と市場参加者が異なる。
23区のうち品川区、杉並区、豊島区、板橋区、練馬区、葛飾区の6区以外の17区は全てマンションの敷地で、うち7区は交通量の多い国道、都道に面している。
マンションの敷地は敷地権の目的の土地であり、敷地権には割合があり、区分所有建物と切り離すことができない。
土地取引は「公示された価格を指標として取引を行うよう」にと地価公示法に書いてあるが、敷地権の目的たる土地を指標に取引することはどういうことであろうか。敷地権の目的となる前の土地が取引の対象となることはあっても敷地権の目的となった土地が取引の対象になることは考えられない。
都民感覚からすると住宅地といえば、田園調布等有名な高級住宅地や普通住宅地、あるいは小規模な戸建てやアパート等が見られる混在住宅地を思い浮かべるが、うち高級住宅地の価格が1番高いと思っている。しかし、騒音、振動、排気ガスが嫌がられる国道や都道に面しているマンションの敷地が最高価格と位置づけられている区が多い。都民感覚からするとかけ離れているのではないだろうか。
また、指定容積率を上回る容積率による公示価格があったり、土地の形状や方位、あるいは側道、三方路に面していることによる増減価のある公示地があったりするので公示価格を指標とすることは難しい。

2015.05.26


老年医学への期待

医師 後藤 重彌(ごとう じゅうや)

私は、1921年3月の生まれであるから、90歳をやや超えたことになる。生地は大分と宮崎の県境に近い佐伯市であるが、親父は大分へ出て眼科の病院を開いた。昔はトラコーマなどが流行ったので病院は繁盛したが、大分が戦災で全滅し病院も焼かれてしまった。
 当時、私は軍医として台湾にいて助かったのだが、軍医としては南方へ行くか満州へ行くかしか選択肢がなかった。しかし既に船がなくて動けなかったことが、奇しくも命拾いに繋がったのである。
 戦後、私は東大の第三内科に戻るのであるが、その頃の東大の内科は第一から第五まであった。東大ではやがて消化器科、循環器科、呼吸器科など専門科へ分科して、表向き「内科」という呼称がなくなってしまったが、今もって「第三内科同窓会」というように、我々の中で「内科」の呼称は健在である。
 それにつけ思うことは、昨今の医師が狭い専門科領域しか扱わなくなった問題である。例えば「小児科」ならごまんとあって大体のことは間に合うのだが、我が世代に必要な
「老人科」という診療科はどこを探してもない。世はまさに高齢化社会で老年病学への関心も需要も旺盛なのに、現実の医療面はお寒い限りである。
 そのような中で今年は6月15日に「第27回日本老年学会総会」、続いて16,17日の2日間に亘り「第53回日本老年医学会学術総会」が京王プラザホテルで開催されたので、それに関して些か所感を述べてみたい。

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2011.10


自由な計画的民主主義の概念を提唱する

東洋大学名誉教授 岡本磐男

まえがき 
 本年9月の民主党代表選挙の結果、菅氏が小沢氏に勝利し、菅政権が発足した。だがこの政権は、言語を絶する程の難題をかかえている。菅氏自身、その点はある程度自覚しているようであり、民主党のマニフェストの一定の実現のためには財政再建と経済成長の両立が不可欠との見解を提示している。だが、厳しい財政危機情況のもとで、経済成長など本当に実現できるのかといえば、その点には大いに疑問がある。

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2010.10.11


鳩山内閣は何故敗北したのか?ー菅政権はどこへ行くのか

1.鳩山前首相は6月2日、民主党両院議員総会で辞意を表明、鳩山内閣は8ヶ月程度で終わったが、元首相の総括を学習することは今日の日本が抱えている問題を考えるうえで重要ではないかと思われる。
  前首相は(1)普天間(飛行場移設)の問題、(2)政治とカネの問題、について失敗したので責任を取って辞意を表明した。
  一方、(1)子ども手当、高校無償化、(2)農業の個別所得補償制度、(3)医療費の増加(4)「国会議員や官僚が威張っていた世の中に風穴があいた。一括交付金などの大きな変化ができつつある。」という地域主権、(5)「今までの仕事を『公』に開くこと…国民の皆さんが主役になること、そういう政治をつくりあげることができる。」という新しい公共、(6)「国境を感じなくなる時代をつくっていく。」という東アジア共同体について成果を述べた。

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2010.06.18


浜矩子『グローバル恐慌』(岩波新書.2009年)について論評する

東洋大学名誉教授 岡本磐男

 浜氏のメディアでの活躍ぶりが注目を集めている。「ちきゅう座」サイトでも同氏の文章を取り上げる人がいたが、批評というまでにはいたっていない。評者は、表題の著作を最近になって入手し熟読してみた。共感を覚える個所も少なくはないが同時に評者の意見とはかなり異なる見解が展開されていることも分かってきた。それ故、以下では同書の主張の概要を示すと共に、これに対する評者の批判的見解を提示してみたい。

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2009.12.09


現在の事態は不況か恐慌か

横浜市立大学名誉教授/ちきゅう座運営委員長 田中正司

T)なぜ不況と恐慌を区別する要があるのか

昨秋来世界を席巻している金融危機は、不況か恐慌か。どちらか明確にする必要がある。用語の選択を誤ると、問題解決のための対応を誤ることになるからである。不況と恐慌の差異については、もとより、専門家の間ではさまざまな解釈がなされており、一義的に断定できない。不況と恐慌との間には本質的な区別はなく、恐慌は大規模な不況、不況の極限状態にすぎないと解する方が一般的かもしれない。しかし、需要と供給との不均衡に基づく好況―不況を字義通りに解すれば、不況なら、しばらく我慢して生産調整をすれば、自然に元の経済水準が回復され、やがて好況に転ずることになるであろう。需給の均衡点という子午線を中心にアップ―ダウンを繰り返すのが需給関係に基づく経済関係の自然法であるからである。ましてや、国家や中央銀行が財政・金融政策で需要拡大を図れば、麻生首相のいうように3年先には景気が回復し好況に転ずることも、あながち口から出任せの放言ということにはならないかもしれない。
しかし、現在の事態が不況ではなく恐慌ということになると、話は根本的に異なる。恐慌は、仮にそれが不況の一種、その極限状態にすぎないものであるとしても、しばらく我慢すればやがて現在の経済水準が回復される不況と異なり、人為的需要拡大をしない限り、現状を回復できない点に原理的な特色をもつものであるからである。恐慌は、絶対的供給過剰で、需要を超える供給の過剰分をカットし、経済水準を実需(に基づく有効需要)水準に下げない限り、バランスを回復できない。オーバーカットされるとき、低下した新しい経済水準で改めてアップ―ダウンが始まるのが恐慌である。それは経済関係が需要―供給関係という経済世界の自然法則に従うものである限り当然の帰結である。
自然の生態系は、オーバーカットをすることで、種の保存と全体バランス、持続可能性を保持しているが、恐慌は、経済世界の自然の摂理で、経済活動がアップ―ダウンの自然法則を超えて肥大化し、自己回復力を失い、破局に陥ったとき、需給のバランスを回復し、経済生活を持続可能にするための天の配剤とでもいうべきものなのである。
現在の世界的経済危機がかりに不況ではなく恐慌であるとすれば、不況克服のための景気対策とは本質的に異なる、オーバーカットを前提した上でのラジカルな経済構造の転換が不可欠になる理由はそこにある。

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2009.1.23


サブプライム問題の総括

1.経済の現状

アメリカ発のサブプライムの焦げ付きは、アメリカのみならず世界の金融・資本市場に激震を走らせ、世界の金融市場を崩壊させた。
 そして今(2008年12月)現在、金融危機が実体経済に波及し、世界経済崩壊の危機に直面している。
 金融危機に対しては世界の中央銀行が協調して利下げその他によって大量の資金供給を実施するとともに影響の大きい銀行に対して銀行債務の保証、預金保護、公的資金の投入、不良資産の買い取り等の緊急政策によって危機を封じ込めようと躍起になっている。新興国に対しては国際通貨基金や世界銀行を強化して支援の体制を整えつつある。不良債権の厳格な査定とそれによる買い取りという難しい実務的問題が残ってはいるものの金融危機は峠を越しつつあるが、銀行が実体経済の危機のため貸し出しを渋って、国債保有に傾斜していることは銀行本来の責務を忘れた保身として批判されるべきである。
 一方、サブプライム問題の根本原因の一つは住宅の過剰供給ということにあるが、今の実体経済の危機の根本原因はあらゆる物の過剰供給ということにある。資本主義本国の人間は政府や企業、業界等あらゆる供給側の宣伝によって消費を煽られ、無駄な物も熱病にうなされたようにして買わされてきたわけであるが、米国の過剰な住宅供給のシステムが決壊したことによって誘引され、他の商品の過剰供給システムが世界的に決壊してきたのである。したがって、世界的に需要が縮小傾向にある現在、過剰供給が緩和されるには時間がかかることになる。各国政府による需要対策は明確な位置づけをもって実施しなければ過剰供給システムを温存することとなり、一時的な効果が見込まれたとしてもかえってマイナスの効果をもたらすこととなろう。
 日本の場合、政府はグリーンスパン米FRB前議長の「百年に一度」の言葉を物まねするばかりで何をしたいのかが見えてこないし、日銀は資金供給しかみえてこない。市場原理主義による運営の崩壊は計画経済や協同経済も必要なことを暗示していると思うが、市場と計画と協同の棲み分けと連絡、公明正大なルールを再検討して、それに向かって当面の緊急対策を講ずる必要があろう。

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2008.12.17


サブプライム −29年代恐慌より大きい世界的信用危機

1.経過
アメリカ発のサブプライムの焦げ付きは、アメリカのみならず世界の金融・資本市場に激震を走らせ、世界に冠たる銀行や証券会社を破綻させている。
昨年7月からの主な破綻は次の通りである。

2007年3月3日 米住宅ローン 高金利型焦げ付き急増
7月11日 米サブプライム担保証券 大量格下げ
8月3日 米不動産投資信託(REIT)大手、アメリカン・ホーム・モーゲージ・インベストメント、米破産法の適用を申請
8月21日 米住宅ローン会社ファースト・マグナス・ファイナンシャル(非上場の住宅ローン会社では米最大手)破産
8月23日 米住宅ローン会社、次々と経営破綻
8月26日 ドイツの州立銀行最大手、バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(LBBW)がザクセン州立銀行(LB)を買収
10月4日 英中銀(BOE)、英中堅銀ノーザン・ロックへ救済融資
2008年2月17日 英ノーザン・ロック国有化
3月16日 米証券第5位のベアー・スターンズ、JPモルガンに買収される。
7月11日 米住宅ローン大手 インディマック・バンコープ破綻、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下
9月7日 米政府 住宅公社(ファニーメイ、フレディマック)2社を政府管理下に
9月15日 米証券第4位のリーマン・プラザール破綻
9月15日 米証券第3位のメリルリンチ、バンク・オブ・アメリカによる吸収合併
9月16日 米連邦準備理事会(FRB)、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)融資救済

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2008.10.4


【書評】堤未果著『貧因大国アメリカ』(岩波新書)

東洋大学名誉教授 岡本 磐男

<メディアネット世界の眼>ちきゅう座より転載

 アメリカは、近代ヨーロッパ思想を受け入れて成立しているイデオロギー国家である。ブッシュ大統領も、つね日頃自国が自由と民主主義の国家であることを誇示しているし、もし、世界の何れかの国で人権侵害が起きたりすれば、つねにこれを厳しく糾弾する姿勢をあらわにする。アメリカの社会で伝統的に受け継がれてきた思想の淵源は、建国以来この国では独立自営業者から成立つ社会を理想社会として追求してきたことに求められると考えうるが、その問題についてはここでは立ち入らない。ここではこの国がよって立つ近代的な明るい思想が、多数の国民の窮乏化によって形骸化し、単に建て前にすぎなくなっている点を指摘するにとどめたい。

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2008.9.11


信用膨張と恐慌

神奈川大学教授 的場昭弘 (リヨン在住)

<メディアネット世界の眼>ちきゅう座より転載

不動産バブルに踊った銀行は今のところおよそ100兆円ほどの負債を抱えている。これが株価の上昇を抑え、それが債務の返還をさらに遅らせる。もちろんその負債が実際の信用に与える影響はその何倍にもなるであろう。それゆえ、国家はこれらの銀行の破綻を避けねばならない。国有化、合併、資本注入などの処置によって、とりあえず信用破綻を回避する必要がある。これは日本のバブル後の処置と同じであろう。
皮肉にもこの危機で行き場を失った資金が、石油や食糧に流れ、それが後進諸国の経済を直撃し、賃金騰貴をもたらし、結果として先進国のインフレそして賃金騰貴への圧力をもたらし、経済成長を引き下げる。最終的に負債を埋めるべき資金回収は遅れざるをえない。しかもアメリカを中心に展開したアフガニスタンやイラクへの軍事支出も重くのしかかる。これもグローバル資本主義に反抗する諸国への資本の攻撃のひとつなのだが、結果的に大きな国家支出をともなった。
いずれの問題も最終的な落ち着きどころは、最後の切り札、絶対的な収入源、税金しかない。とはいえ税金も国債として膨大な信用拡大をしているわけで、破綻の可能性はある。前門の狼、後門の虎。今回は理論的な点で考えてみよう。

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2008.8.13


バブルを超えた中央区(商業地)
−H20年公示価格の特徴

1.中央区の商業地は、バブル時の最高価格を1.3%超え、史上最高の価格をつけた。
日本の繁華街を代表する「銀座4−5−6」のポイントだが、外資や投資ファンド等が競合して価格が上昇、取引利回りが低下している。賃料も上昇傾向である。

2.19年に比べて住宅地の上昇率はペースが落ちてきたが、商業地は横ばい。

3.最高価格をつけたバブル時と比べると、住宅地の価格は約40%、商業地は約37%であるが、中央区がバブルを超えた。
バブル前と比べると住宅地が約41%の上昇、商業地が約34%の上昇となっているが、逆に下がっている区が7区もあり、板橋区にいたっては44%も下落している。都心の華やかさに比べ周辺区の商業地の地盤沈下がみてとれる。

4.住宅地は千代田区とその他の区との格差は横ばいだが、商業地は格差が開いてきていることがみてとれる。地方のシャッター通り商店街に象徴される都市と地方の格差だけではなく、23区内においても商店街の格差が着実に進行している。再開発による都市化促進もいいが、点のみが良くても面としての繁華性が失われていけば点もそのうち活気を失ってくることは疑いない。
  
5.米国の「サブプライム問題」で不動産ファンドは再編淘汰に直面しているが、それに影響されて地価も勢いが薄れてきている。しかし、世界的金余り状況は相変わらずで、商品バブルを煽っているが、いずれ商品バブルも崩壊するだろう。すると余剰資金をかかえた投資家が投資先として再度不動産に目をつけることは疑いないと思われる。バブル時に比べたら未だ安いからである。

6.しかし、地価に見られる格差は他の諸々の格差とともに日本資本主義が直面している大問題であるが、関係指導層の危機意識が伝わってこない。

2008.4.29


5カ年にわたる景気回復の終焉

経済学者 細田 二郎

 日本の株式市場で株価の大暴落が生ずるようになってきた。本年の3月中旬には日経平均株価が約2年半ぶりに1万2000円以下に下落したが、この数値は昨年秋頃の高値水準に比較すれば4000円以上の値下がりで、株価の崩落は極度に顕著であるといえよう。もとよりこれは一面ではサブプライムローン問題に起因する米国経済の不振によって影響を与えられたものでもあろう。しかしながら世界の株式市場の中では、日本の株式市場での株価崩落の比重が最も著しいようである。これは現在の福田政権の政策が全く無策であることを示すものといえるかもしれない。けれども私は5年間にわたる日本のおける景気回復の終焉の予兆を示すものとみなしうるのではないかと思う。
 政府見解では、今回の長期にわたる日本の景気回復は、いざなぎ景気を超えたと誇らしげに述べている。それでは日本の一般市民・勤労者は、この回復に景況感を感じ満足してきたかといえば、大多数はそうではないように思われる。その理由は後述することとしょう。

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2008.3.30



サブプライムローン問題とは何か

東洋大学名誉教授 岡本磐男

 昨年夏よりアメリカの低所得者向け住宅ローンとしてのサブプライムローンなるものが破綻して、世界の金融市場を混乱に陥れていることが話題となっている。
 メディア情報によれば、住宅ローンを担当している金融機関がそのローン(貸出)債権を証券化し、小口の証券として他の金融機関や投資家に売却してきたが、住宅ローンの借手が返済できなくなると、その証券価格が下落し、金融機関・投資家は損失を招く。その金融機関・投資家とは単にアメリカ国内のそれにとどまらず、海外諸国の金融機関・投資家をも巻きこんでいるので、証券価格下落による損失の問題は国際的に拡散している。こうした証券は投資信託にも含まれているといわれるが、金融機関・投資家がこのようなリスクのある証券を購入してきたのは、一流の格付機関ですらこれを信用のおける証券として価格保証してきたためであろう。

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2008.1.15


運用会社は淘汰・再編される

  1. 金融庁は大手銀行に対して、都心を中心とする不動産の高騰を危惧して、不動産ファンド融資の自主規制を指導しているとのこと。金融商品取引法(金取法)の先取りだが、9月末より不動産ファンドも金取法の網がかかった。報道によると不動産ファンドは密かに不動産を売り急いでいるとのことだが、08年3月までが経過措置でそれ以降に金融庁の本格的な立ち入り検査が始まるとのことなので運用会社の淘汰・再編は時間の問題といわれている。
  2. 8月9日欧州の金融市場で始まった米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)の焦げ付きに端を発した信用収縮で、日本の不動産ファンドも大きな影響を受けたが、総括は次のようになろう。
    (1)返済能力の低い者への貸し出しはリスクが大きい。
    (2)リスクが顕在化した場合、担保とした不動産の価格は予想以上に下落する。
    (3)金融技術を駆使してリスクを軽減・平準化して、投資家に転化してもリスクがなくなるわけではない。
    (4)格付け機関の不動産に関する格付けはあてにならない。
  3. 日本の不動産ファンドは大丈夫だろうか。
    いざという場合、証券化対象不動産を市場で売却する必要があるが、適正に評価していても売却の苦戦が予想される。ましてや過大に評価している場合は想像を絶するパニックに陥ることとなろう。
    不動産鑑定士に対する4日間にわたる証券化対象不動産の特別研修に提出された東京証券取引所の資料によると、DCF法を中心とした鑑定評価額が積算価格の2〜3倍にもなっていたが、依頼者の高め評価の要請を受け容れすぎているようだ。
    積算価格の土地と建物の割合を使って評価額の建物を試算してみると中古の建物が新築の建物よりも高く試算されるという笑うに笑えないことが起こっている。
    格付け機関は収益価格(DCF法ではなく直接法)によって評価していると伝え聞くが、不動産鑑定士の鑑定評価額を参考としているようで過大評価の疑いがもたれる。もっとも格付け機関が取引先の不動産証券を格付けする行為は利益相反行為であろう。
  4. 予想される淘汰・再編の荒波を乗りきり、不動産ファンドが市場の信任を得るためには不動産証券を組成・提供するファンド側から依頼される鑑定評価書だけで証券化対象不動産を評価するのは不十分といわざるをえない。ファンド側からの鑑定評価書を不動産証券を購入する側の立場から点検検討する作業を経過してはじめて証券化対象不動産の評価は客観的となるのである。そして、客観的評価に根ざしたファンドの運用は市場の信任を得ることとなろう。

付記
適正評価グループ(東京建物(株)の鑑定部に在籍していたOBの鑑定士によるグループ)では、証券化対象不動産の鑑定評価書のチェックリストを作成しています。

2007.9.27



不動産投資信託(REIT)は担保されているか

  1. 8月9日欧州の金融市場で始まった米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)の焦げ付きに端を発した信用収縮で、日本の不動産投資信託(REIT)も外国人投資家の売りが膨らんで値下がりしたが、追加利上げの見送りで値下げ前の水準に戻ってきている。
  2. ところで、今回の信用収縮は不動産証券化のかかえる問題を明らかにした。
    その1は、銀行に代わって融資する住宅ローン会社の融資基準が甘かったということだろう。リスクを証券化商品に仕立て顧客に転嫁できるようになったからである。
    その2は、金融技術の進歩だろう。金融技術の進歩はリスクを集めて切り張りし、リスクを軽減・平準化することであり、投資家のリスクを軽減する仕組みであるが、その仕組みは複雑で顧客の理解度をこえている。顧客は買った商品の真のリスクが分からなくなっているのである。
    その3は、格付け会社の格付けが甘かったということであろう。
    証券化商品は複雑で顧客の理解度を超えているので、顧客は格付けをみて商品を購入することとなる。金融当局も格付けを奨励しているが証券化不動産が複雑なため格付け会社も金融当局も真のリスクの所在を把握できていなかったのではなかろうか。
    信用収縮まで警告を出さず7月になってあわてて格下げを重ねたことで、格付け会社は何をやっていたんだと疑われ、ドッド上院銀行住宅都市委員長(民主党)にサブプライム関連証券の格付けに「重大な懸念」をいだいていると言われたり、「格付け会社は『サブプライム崩壊』の中心的役割を果たした」(住宅委で共和党筆頭幹部のシェルビー上院議員)と批判されたのである。
  3. 2001年のエンロン破綻を機に格付け会社と顧客会社の関係が問題になった。格付け先から手数料をもらう利益相反の立場にある格付け会社の格付けの信頼が疑われたからである。日米欧の金融当局は格付け会社の監視強化を考えだしているようだし10月のG7(主要7カ国財務相・中央総裁会議)などで議題になる可能性があるとのことだが、監視を強化しても利益相反の基盤を残したままでは繰り返し格付けの甘さが起こる可能性があろう。
    日本でも「市場の透明性を高めるため、(格付け会社の)規制は議論になりる」(財務省幹部)との声が出始めているが、最大のポイントは利益相反をどう解決するかということであろう。
    サブプライムローンの証券化ををみると、複雑な証券化とその小口化はリスクを許容する顧客をひろげた。証券を組成・販売する側にとってはリスクを証券という形で広範な顧客に転嫁でき、各種の手数料や保管料あるいは運営報酬料などを稼ぐことができるうまみのある技術なのである。うまみのある証券化のターゲットの1つとして目をつけられたのが信用力の低い数の多い個人である。一方、容易に融資を受けることとなった個人は競って住宅を購入するようになって住宅バブルが発生したのである。
    しかし、住宅ローンの返済が滞ったという情報が伝わると資金の出し手は供給を絞ってきたので資金を手当てできない住宅ローン会社は経営危機となって一挙にバブルが崩壊、金融市場がパニックに陥ったのである。
    バブルの生成と崩壊の過程は、組成・販売する側と利害関係を有する格付け会社の格付けが甘かったということを露呈させたのである。
  4. 日本の不動産投資信託(REIT)の場合はどうであろうか?
    REITの客観性を担保するのは、格付けと不動産の鑑定評価であろう。
    しかし、格付け機関に格付けを依頼したり、不動産の鑑定評価を依頼するのはREITを組成・販売する側である。伝え聞くところによると格付け機関の不動産の評価額は鑑定評価額と近似しているとのことである。
    不動産鑑定評価額はDCF法で求められた試算価格を中心に求められるが、試算価格の1つである積算価格(土地価格と建物価格の合計)の1.5〜3倍となっているのが相当見受けられる。積算価格の土地と建物の比を使って鑑定評価額のうち建物価額を求めると対象建物が中古にもかかわらず再調達原価(新築を想定した価額)よりも高くなる場合もあるようだ。つまり、格付けも不動産鑑定評価も甘いという可能性を否定できないのである。格付けや不動産の鑑定評価書がREITを組成・販売する側の立場を考慮しているからであろう。金融庁は最低2社から鑑定評価をとるようにといっているそうだが、REITを組成・販売する側からの鑑定評価では客観性を担保するのは難しい。2社から鑑定評価を求めるよりもよりもREITを組成・販売する側から全く独立した立場から組成・販売する側の不動産鑑定評価書を点検するシステムを考えた方が緊張関係の発生により客観性を担保できるようになるのではないだろうか?
    国交省は、不当鑑定評価について処分を強化する方向で担保しょうとしているようだが、顧客(消費者)に累が及んでからでは遅すぎるのではないだろうか。
  5. 証券化対象不動産の鑑定評価について鑑定評価基準が定められ、本年7月1日から施行されている。これによって証券のおおもとにある不動産のリスクを判断しやすくなつたが、まだまだ鑑定評価書は専門的で難しいという批判に応えきれていないようだ。
    したがって、第三者の立場での鑑定評価書のチェック機能が必要となろう。

付記
適正評価グループ(東京建物(株)の鑑定部に在籍していたOBの鑑定士によるグループ)では、証券化対象不動産の鑑定評価書のチェックリストを作成しています。

2007.9.6



社保庁職員は可哀想

 年金で社保庁が揺れている。年金は老後の命綱なので、何とかしてもらうのはあたりまえだ。しかし、社保庁の職員全員にボーナス返上の呼びかけは、如何なものだろう。社保庁のトップ官僚以下が責任を取るのは当然としても、全職員に責任をなすりつけるやり方には賛成できない。何故なら、悪さをすれば悪さの度合いに応じて処分される立場の職員とそれを処分する立場の官僚とは自ずと違いがあるからである。また、マスコミは組合が強いので社保庁が腐敗したかのような言いぐさだが、組合のやりすぎは問題だが、組合が強いことは悪いことでも何でもないと思われる。官僚や大企業の経営者の団結は非常に強いと思われるがこちらは問題にならず、組合だけが問題になるのは片手落ちと思うが如何であろうか。

 IT−デジタルになって仕事が細かくなって、本質よりも枝葉末節なことに気をとられ、ストレスがたまるようになってきた。ソフトの組み方によってはどのような小さなミスもチェック出来るようになってきたからであろう。教員も職員も役人も会社員も、独立とは名ばかりの多くの資格者もミスに怯える小さな人間になってきたように思われる。IT技術発達はミス自体は小さなミスでもその影響が広くなっているからでしょう。

 リート市場ではDCF法が不動産評価の中心となっているが、H18.4.30現在の上場不動産の評価はDCF法による価格が積算価格の1.6倍が平均で、中には3倍のも見受けられます。自用の建物及びその敷地≧貸し家及びその敷地の価格 が普通と思われるので、積算価格≧DCF法価格 となろう。とすると、1.6倍差をどのように調整していたのだろうか? さすが、鑑定士の裁量と言うところか。しかし、収益物件の売れ行きはガタ落ちしており、ババ抜き合戦が始まっていると聞くがファンドの崩壊が現実になるのだろうか。 

2007.7.12


不動産判例

<判例1>
仲介業者に買い受けを依頼した者が購入を決定した後、他の業者の媒介で同一不動産を購入した場合(H18.2.1横浜地裁判決)。

買い受けを依頼された仲介業者が、不動産を探して依頼者に紹介し、3380万円で売買契約締結予定であったが、その後依頼者が業者を排し、他の業者の仲介により同一不動産を購入したため、依頼者に対し民法130条(条件の成就の妨害)により仲介料の支払いを求めた事案です。

判決は、仲介業者と依頼者との間に買い受けの媒介契約が成立したとした上で、希望の不動産を探し、所有者と3380万円で売買契約を締結することを決定した後、業者を排除して、他の業者の仲介により同一不動産を購入したので、故意に売買契約の成立を妨げたのであるから、民法130条により仲介手数料を依頼者に請求できると判決しました。

<判例2>
マンション業者が当初ペット禁止として販売、後日ペット可として販売した場合(H17.5.30大分地裁判決)。

マンション業者からペット禁止の説明を受けて購入した者が、後日ペット可として販売した居住者間に紛争が発生したため、業者に対して、説明義務違反があったとして、損害賠償を求めた事案です。

判決は、マンション業者が首尾一貫しない説明をしてマンションを販売し、住民間にトラブルを発生させたとして説明義務違反による不法行為があったとして、飼育反対の購入者の請求を認めました。

2007.7.12


公示価格から見た東京の風景

 H19年3月22日に公示地価格が発表されたが、東京23区の住宅地と商業地の最高価格を比べてみました。

 最高価格がついている土地は、その区で一番良い住宅地であり、また、一番繁華性の高い商業地であるので、23区の一番同士の土地・地域の比較というになります。

 土地の価格は、価格の高いところから低いところに波及していきますが、最高価格を比較することは波及の度合いを測る場合でも合理的ですが、H18年1年間の土地の値上がりは住宅地で、渋谷の33.9%、港の30.3%を筆頭に20%台の品川、目黒、10%台の千代田、中央区以下12区が続き、最低は墨田区の7.3%となっていますが、H17年よりも値上がり率は上昇しております。

 商業地は、中央33.0%、台東31.6%、渋谷35.0%、豊島35.6%を筆頭に20%台が千代田、港他6区、10%台が新宿他9区、練馬区の8.6%となっていますが、商業地もH17年1年間よりも値上がり率は上昇しています。

 日本の経済が良くなってきたといわれていますが、それは大企業の話で庶民感覚では生活が相変わらず苦しいというのが実感でしょうが、そのような中で何故不動産は値上がりしているのでしょうか?

 それは不動産が財市場の不動産から金融市場の不動産へと財から金融商品へと変化してきたことに原因があると思われます。不動産が金融商品化することによって不動産への投資がうまみのある投資となり、内外の投資家がファンドを通して不動産に投資しているからです。世界的にお金が余っているので内外の投資ファンドは安い金利のお金を借りて不動産に投資しているのです。一方、お金の貸し手の銀行はどうかというと税金によって救われたことをケロッと忘れて不動産に対する貸し出し競争に走っている情況です。だから、めぼしい不動産を見つけては買いあさっているので値上がりしているのです。消費者物価等他の物価上昇率からすると土地の値上がりは異常です。
 土地の値上がりは都心区と周辺区との格差を拡大しています。

 住宅地では、千代田区(2,900,000円/u)の100に対して、最も低い墨田区が11.1(322,000円/u)となっています。

 商業地では中央区を(30,600,000円/u)の100に対して、最も低い練馬区が3.5(1,070,000円/u)となっています。

 H18年の公示地によると、葛飾区が14.0(350,000円/u)、板橋区が3.7(907,000円/u)だったので、23区内で最も高い価格をもつ区ともっとも安い価格を持つ区との地域格差は住宅地、商業地とも拡大していることとなりました(H18年の商業地の100は千代田区)。 

 ちなみに小泉政権が誕生したH13年の公示地は、千代田区の住宅地と、中央区の商業地100に対して住宅地では足立区の17.3、商業地では葛飾区の6.8だったので、住宅地で17.3→11.1、商業地で6.8→3.5というように格差が拡大したこととなりました。6年間で格差が縮小した区は、住宅地では港区が59.3→94.8、品川区が34.8→41.4、目黒区が39.7→42.4、渋谷区が51.4→57.2というように4区ありますが、商業地は中央区と千代田区が拮抗している以外全ての区で格差が拡大しました。

 地価から見える風景は、人・物・金を吸い寄せる都心区と、周辺区の格差拡大であります。海外からの資金や全国の人・物・金を吸い寄せる都心区と取り残された地方と周辺区の歪な多重構造です。

 住宅地では、有名住宅地を抱えている区や再開発による高層マンション地域を抱える区は発展している一方、真面目に汗水流して働く庶民の多い区や高齢者が多い区は取り残されてきています。商業地は、銀座や丸の内等を抱える都心3区と区内では最高に繁華性の高い商店街ではあるが都心との格差はますます拡大しています。

 区内で最高に繁華性の高い商店街の格差が拡大している背後には数多くのシャッター商店街がジワジワと拡大しています。商店主に取材すると、地域住民に商店街を開放しての「フリーマーケット」等の商店街活性化の努力もむなしく将来への夢を失っている声があちこちで聞かれます。「こんなに苦労してもおさき真っ暗な店をどうして息子や娘に継いでくれとはいえない」、「借り手がいるならすぐにでも貸して隠居したい」、と頭を抱えています。多くの商店街の実態は崩壊しているのです。

 非行等の教育問題が語られるときまって「地域の協力が欠かせない」という主旨の話が出てきますが、商店街が崩壊することによって地域は崩壊しているのです。

 23区の地価公示の最高価格は、庶民の目線からはグロテスクにもみえました。

2007年4月3日



 昨年は、アフガン−イラクの泥沼化、自動車のGMやフォ−ドの凋落に象徴されたアメリカ資本主義の没落がはっきりした年でした。一方、シリコンバレー・台湾・中国と連結したアジア資本主義の勢いを益々印象づけられる年でもありました。アジア資本主義によるヨーロッパ・アメリカ資本主義の再編の渦の中で、日本は外には北朝鮮との対決、内には支配の強制を本質とする教育基本法改正の成立の仕方に見られるように政府・行政一体となって中央集権の強化を目指しているだけの体たらくです。多くの企業は日本国の時代錯誤を尻目に多国籍企業として世界に出て行っています。
 標準規格の下、インターネットで結ばれた世界の個人・グループ・企業が共同して何かを作り上げ、それ等を集めて加工組み立てること、これがアジアを舞台にして行われており、そのエネルギーが戦後をリードしたアメリカ資本主義を凋落させているのです。
 不動産鑑定の世界でも、流行のDCF法という収益還元法も例えば支出の項目がバラバラで、統一されていないので鑑定評価書の収益価格や収益性の比較が非常に困難です。
 したがって、現状のままで行くのか、それとも英知を出し合って標準規格を作り、その下で社会や市場の荒波に立ち向かっていくのかが問われています。幕末の志士の開国の気迫を持って頑張りたいと思います。
 本年もどうぞよろしくお付き合い下さい。

2007年元旦


いいのか東京でオリンピック
−地価からみても都道府県の格差は拡大している

 9月19日にH18年基準地価格が発表されたが、都道府県平均価格を比較してみると東京100(住宅地 311,800円/u、 商業地1,311,400円/u)に対して、地価が最も低い県は住宅地、商業地ともに秋田県で、それぞれ、7.1(22,200円/u)、3.8(50,400円/u)となっている。
 H17年は、住宅地が北海道の7.8、商業地が秋田の4.6であるからこの1年で東京と最も低い県との格差は、住宅地で7.8→7.1、商業地が4.6→3.8と開いてきている(H17年の秋田の住宅地は8.2である)。
 17年から18年にかけて格差が縮小したり横ばいであった県は住宅地では無く、商業地で香川の8.3→8.5、京都の20.3→20.3の二つのみである。
 小泉政権が誕生したH13年は、地価が最も低い県は住宅地、商業地とも島根県で8.6、5.9である。
 小泉政権の5年間では、東京に比べて最も低い県との格差が、住宅地は8.6→7.1、商業地が5.9→3.8と拡大している。
 格差が縮小したり横ばいであった道府県は、皆無となっている。
日本第2の商業都市大阪の場合をみると、住宅地が63.5→50.5、商業地が43.9→33.3で、大阪の位置が5年間に住宅地で東京の約半分、商業地で三分の一になった。
 東京とオリンピック開催地をめぐって競合した福岡は、住宅地が19.1→15.8、商業地が22.5→17.5と拡大している。
 その他の道府県も住宅地、商業地とも格差は拡大している。
 小泉政権は、東京と地方の格差拡大、勝ち組東京・負け組全ての地方といういびつな日本になってきたことに無策だったことがうかがえる。
 特に、シャッター商店街に象徴されるように商業地の格差が拡大しているが、地方・地域を支える小売店に冷たかったことがうかがえる。

 では、勝ち組東京の中身はどうかというと、23区の最高価格を比較してみるとH18年は千代田区の住宅地(2,680,000円/u)と中央区の商業地(19,000,000円/u)を100として、最も低い区は住宅地で墨田区の10.9、商業地は葛飾区の2.7、H17年は墨田区の12.0、葛飾区の3.0であるから、23区内でも住宅地、商業地とも格差が拡大している(H17年の商業地の100は千代田区)。 
 小泉政権が誕生したH13年は、千代田区の住宅地と商業地100に対して住宅地で墨田区の14.1、商業地で葛飾区の4.8である。
 小泉政権の5年間では、住宅地は14.1→10.9、商業地が4.8→2.7と拡大している。 格差が縮小した区は、港区と渋谷区の住宅地で57.9→61.6と39.5→39.9、商業地で中央区の83.6→100であったが、他の区は住宅地商業地とも格差が拡大した。
 小泉政権は、23区内でも、勝ち組都心区・負け組それ以外の全ての区といういびつな東京23区になってきたことに無策だったことがうかがえる。
 今「格差社会」や「格差社会」の拡大が話題となっているが、地価から見た場合も東京と地方、都心区と周辺区は格差が拡大している。東京一極集中ではなく東京都心区一極集中、これが小泉政権の5年間であり、日本の現状である。
そして、勝ち組東京都心は、先進国の都心との格差競争にさらされている。

 石原都知事は国と一体となって東京にオリンピックを招致しようとアピールに余念がないが、人、物、金を東京に集中・集積することがさらなる格差の拡大にならないかどうか考えてみる必要があろう。
 収入格差の拡大をはじめ、様々な格差の拡大に警鐘が鳴らされて久しいが、格差拡大に対する無策がこのまま続けば人々の不安は燎原の火のごとく燃え広がり、社会は不安と不満のるつぼと化し、「美しい国」は完全に吹き飛んでしまうこととなるだろう。
 (一覧表が欲しい方はTEL下さい。FAXします)

2006年10月5日


東京高裁は不当な鑑定評価を不当ではないとした

1.01年(S64年)に破綻した「大和都市管財」(大阪市)の詐欺事件にからみ、同社の抵当証券を買った顧客が「不当鑑定評価」として不動産鑑定士と不動産鑑定会社に損害賠償を求めた民事裁判で、東京高等裁判所は7月19日、損害賠償を命じた1審・東京地裁の判決を取り消し、元顧客の請求を却下した。

2.1審では、抵当証券発行の場合の抵当不動産の鑑定評価は、抵当不動産の競売代金が抵当証券購入者の最後のよりどころとなるため、不動産鑑定士は現実に買い手が現れる価格を正常価格として算定しなければならないにもかかわらず、被告不動産鑑定士は、需用者側(買い主)の事情を考慮した収益還元法を無視して、価格が高く出る供給者側(売り主)の都合だけを考慮した原価法だけで鑑定評価額を決定したことは、不動産鑑定士の専門的裁量の範囲を逸脱した違法なものであり、鑑定評価の専門家に求められる注意義務に違反している、として不動産鑑定士に損害賠償を命じた。
  つまり、被告不動産鑑定士の鑑定評価は不当鑑定評価であると判決したのである。

3.ところが、2審ではそれが逆転したのである。
  判決は以下の通りである。

・・続きを読む

06年7月25日


土地と借金が文明を滅ぼす?
 −このままでいいのか日本−

 自由主義経済学の創始者アダム・スミスは、近代文明も土地不足(植民地の消滅)と借金(財政破綻)で崩壊する、と考えていたそうですが現在にもあてはまるようです。
 15年ほど前は100u以下の戸建て敷地は小さいと感じていたのが今では普通となりました。50u以下の敷地も見られ、それが5,000万もするのが普通となっています。7割の3,500万を金利5%の20年ロ−ンとして毎月23万4千円の支払いとなります。30年で約19万円です。
 小さくなった戸建てに比べてマンションはというと上へ上へと伸びていき、朝のラッシュ時はエレベ−タ−が大変で地上に出るまでが一苦労。見晴らしがいいというのも束の間で、高層マンションがニョキニョキと建ち並び、景観も台無し。住宅の1階建てが2階建てに、2階建てが3階建てになっていった過程と全く同じで、自分さへよければと思っても結局はパ−ということのようだ。道路は暗くなるし、空までも狭くなって潤いが無くなってきたようだ。
 財政赤字も大変で、国は本当はいくら借金をしているのか言おうとしない。多重債務者がいくら借金しているのかわからないのと全く同じだ。
 内部から自己崩壊しなければいいのだが。土地と借金、成り行きに任せると怖いようだ。

‘06(H18)5.24


'06年、バブル元年か?
 −名古屋中村5-32は38.0%の上昇−

 3月24日地価公示が発表された。全国的には住宅地・商業地とも下落率が縮小、東京都は住宅・商業地ともに上昇した。また、商業地のみ上昇したのが愛知、京都、大阪。 
 東京23区の最高値でみてみると10%以上の上昇率は住宅地が港、品川、渋谷区、商業地が千代田、中央、渋谷区となっている。
 変動率でみる日本は、東京の中心区が水面より突出、他は水面下でアップアップということになる。また、上昇率上位10位までは、住宅地が28.8〜18.6%、商業地が38.0〜28.6%と高い上昇率を示している。他の物価変動と比べて異常である。参考までに、消費者物価指数の'06年1月の前年比は0.5%、企業物価指数は2.6%の上昇である。
 鑑定士の多くはバブルを心配しているが、バブルを言うと仕事にならないし、一方、行政もデフレ退治にバブルを利用しているようだ。
 日銀の量的金融緩和政策の解除にもかかわらず、金融機関を始め各業界は過去15年の間にバブルを忘れ、いま又、バブルの甘い誘惑の虜になってしまったようだ。「土地の有効活用はバブルと違うよ、それにしても何でもいいから土地を売ってくれ、他よりも高く買うから」と。

2006年3月29日


2006年、新たな危機が始まっている?
−政府も日銀もしっかり頑張れ−

 ブッシュ大統領の第2次政権からパール元国防次官補を代表とするネオコンが総退陣したことはイラク戦争の失敗が原因とされ、米国はテロ戦争から手を引き世界の警察官を止めるのではないか、とみられている。中国はサウジと共同で日本の備蓄の十倍位の桶をつくりサウジから石油を買い、ミサイルや戦車、飛行機、安い洋服等を売り、実質的な物々交換関係を築き、また、コロンビアに太平洋までの石油管を作ってベネズエラから直接石油を買い、兵器や安い物を売り、ドルを仲立ちとしない関係を築いてきている。
 アメリカの後退と中国の台頭、という歴史的変動期にあっても小泉政権は単純なアメリカ一辺倒で、新たに始まっている日本の危機に無頓着である。
 日銀の量的緩和政策の解除に難癖をつけたりする前に国民の生命と財産をいかにして守るのか、日本の戦略をしっかり提起してもらいたいものだ。日銀は物価安定の手段をしっかり確保して、物価の番人として役割をきちんと果たしてもらいたいものだ。 また、マスコミも政府にチャラチャラするだけでは社会の木鐸の名がすたるものだ。量的金融緩和を背景に土地や株のバブルが再発していたことを総括すべきである。起こった後にしたり顔で騒ぐマスコミなんかみっともないだけであろう。


 本年も又、中国での激烈な設備投資競争を軸として世界資本主義が大きく再編される年となるのでしょうか? アメリカは勢力が衰え、軍事以外は空洞化してきているようだし、欧州も元気がないようです。日本は中国発の価格競争にまだまだ翻弄されそうだし、ブッシュ頼みで国際的孤立化をさらに進んでいくようです。
 一方国内では、企業の寡占・独占体制が進展し、株市場の投機化、不動産市場の暴走が始まっているにもかかわらず、対する行政の無力化、士(さむらい)資格者の腐敗等市場を取り巻く環境が危うくなってきています。社会面でも史上初の犯罪発生、闇勢力の表世界への拡大、社会的歯止めの喪失が危惧されています。
 政治では陣笠が増えて国士がいなくなり、国民不在、弱者切捨ての歳出縮小と増税・国有財産売却による歳入増の財政再建論だけが幅をきかせ、知恵の輝きが見受けられません。
 本当にこれでいいのか日本は、と思います。
 心ある士(さむらい)資格者の一人として、健全な市場を国民に!と奮闘したいと思います。

2006年1月1日


ファンドが花盛り
−不動産も株や債券と同じ−

 今は阪神やTBS、ついこないだはフジテレビと、ファンドが花盛りだ、今この会社を買ったらどの位儲かるか、と、会社を売買している。経営者だけではなく、従業員も取引先もその他関係者は今度はうちではと夜もおちおち眠れないのでは?
 一方、不動産ファンドはというと、J−REIT市場の7月末時価総額が約7.5兆円と大きく成長してきているが、米国が約39兆円、オーストラリアが約7.7兆円なのでまだまだ成長すると予想されている。
 先日、東京不動産鑑定士協会のパネルディスカッションで「ファンドから見て不動産は高いのか?」という質問に対して、外資系銀行・証券会社の担当者は「キャップレートが3%になっても買ってもいい」「国際比較からみても日本の不動産は安い」「地銀は国債より不動産ファンドでよいと積極的」「株・債券と組み合わせているので心配ない」等々、まだまだ「上昇トレンド」と強気の発言が続いた。
 「不動産の売買はどちらを先にするのか?」と言う質問に対しては「買いが先で売りが後、資産を減らすのは首を閉めることだから」と、売りが先で買いが後の普通の行動パターンの反対であったが、リスクを金儲けの対象にしているようだった。
 しかし、リスクを小口化して市場原理主義=金儲け主義に走る姿は何となく気になった。

2005年10月25日


暑中お見舞い申し上げます
−相続税路線価は上昇−

 東京国税局は8月1日東京都の相続税路線価を発表しましたが、平均路線価は46万円で13年ぶりの前年比0.4%上昇、区部は平均59万3千円で0.9%上昇とのこと。最高地は前年まで下落していた大森、池袋、高円寺、荻窪で上昇、横ばいだった立川、赤坂等7ヶ所も上昇、今年も下落したのは上野、浅草橋等12ヶ所。下落したところは再開発や高度利用が進んでいない為と見られている。最高価格の日本一は銀座5丁目銀座中央通り(鳩居堂前)の1,512万円(9.9%上昇)、上昇率では丸の内2丁目(丸ビル前)の18.2%(1,480万円)となっている。
 ところで、中小不動産業者の話では業者間で物件のキャッチボールを繰り返しているとのことで、バブル前夜の状況に酷似してきている。
 業者のキャッチボールがどこまで続くのかが問題だが、銀行の貸出しが緩やかになってきているのでキャッチボールが続き、地価上昇に弾みがつく可能性が大きいと見られる。
 話変わって、東京建物(株)の鑑定部に在籍したことのある元鑑定部長、課長をはじめとする不動産鑑定士により「適正評価グループ」を立上げました。主に減損会計や不動産投資信託(リート)を営業対象とするものです。昨今のリートの評価は公示価格の2倍以上のが見られます。危惧されます。
2005年8月3日

地価が混沌としている 〜不動産の金融化が原因?〜
 地価は大部分が下げ止まり、一部がバブル、他の一部が未だ下がっている。地価は二極分解しているのではなく混沌としてきている。
 商業地は住宅地よりも高い、というのも昔の話。衰退している商店街の小さな土地とマンション用地とはどちらに需要がつくのだろうか?一戸建ての住宅地とマンション用地とではどちらが高いのだろうか?大きい土地と小さな土地の単価はどちらが高くなっているのだろうか?等々本当に混沌としてきている。
 一方の極にバブル、他方の極に下落、なかを取り持つ下げ止まりというなかで、売主は高く売れると強気になり、買主は慎重ということで中小不動産業者は仕入れがなければ心配、売れなければ心配と大変な毎日のよう。
 不動産が金融商品になったこと、しかし、不動産は生活や経済活動にとって必要不可欠なものというように不動産の位置づけが多様化していることが混沌の根っこにあるのでは? 
 財市場や資本市場ではなく金融市場の商品になったことにより世界の短期資本が株や債券等他の金融商品との比較関連で不動産を位置付けていることが混沌を深めているのでは? 
 財市場や資本市場と金融市場を組み合わせて不動産を位置付けているから混沌としてきているのではなかろうか?

2005年6月3日


固定資産税・都市計画税の節税に
−縦覧制度の活用を−
 6月30日までの固定資産課税台帳の縦覧が始まりました。固定資産税や都市計画税は、23区は都が、それ以外は市町村が税額を通知して課税する賦課税です。納税者は高いなと思いつつも諦めているようです。
 しかし、固定資産税の節税は結構頭の体操になるし、節税に成功した暁にはそれ以降半永久的に節税効果が続くこととなりますからたとえ額は小さくても小さな巨人となります。
 仕組みは複雑ですが目の付け所は3ヶ所でしょう。
1)土地の接面する街路の路線価と主要な街路の路線価との格差の所、
2)接面街路から土地価格が決定される所、
3) 土地価格から課税標準・税額が決定される所、
の3ヶ所です。
 接面街路沿いは同じなのに街路に価格の異なる二つの路線価がふってあったり、住宅用地なのに非住宅用地として高く課税されていたりと面白いことに出くわすことがあるかもしれません。それが節税につながることがあります。
 都も市町村も限られた時間内に、限られた人数で膨大な量をこなさなければならないのでミスも錯誤も生じることは仕方のないことです。又、採用している市販のソフトの限界もあります。
 小さな巨人の節税に是非、縦覧制度の活用を勧めます。
2005年5月2日

中心地は4年連続上昇−H17年公示より

 3月24日発表の地価公示では下落幅が小さくなってきてはいるが、まだ下落しているとのこと。特に地方はまだ下落に歯止めがかかっていないとのこと。核店舗の抜けた商業地は明日が見えないとのこと。アテとツッカイ棒は相手からはずれるもので、自分たちの街は自分たちで守るしかないのだが、アテ頼み、行政頼みの無気力が支配しているようだ。
 変革期には点を見て、その点がどこに向かっているのかを見極めることが大切である。
 最高価格は千代田区の5−42(丸の内2−4−1)で22,000千円/u。昨年比+4.8%である。5−42が設定されたH14年の価格が18,700千円/uだったのでその年に比べると+17.6%の4年連続の上昇ということとなる。全国的にはまだ下落傾向だが最高価格は上昇している。又、バブル前のS60年からの数少ないポイントのうち中央区の5−2(銀座8−6−25)はH13年から上昇、H17年は8,670千円/uでH13年と比べて+12.6%となっている。S60年は11,000千円/uなのでS60年を100とした場合のH17年の指数は70である。ちなみに東京都区部消費者物価指数はS60年が85.7、H16年が97.4なのでS60年を100とした場合113.7となり、片や70なのでまだまだ上昇可能性が大きいこととなる。今後は中心商業地の上昇と上昇の周辺への波及が予想される。
  千代田5−42
千円/u 変動率
H17 22,000 +4.8% +17.6%
H16 21,000
H14 18,700  

    中央5−2 東京都区部
消費者物価指数
千円/u 変動率 指数 H12=100 S60=100
H17 8,670 +12.6% 70    
H16     97.4 113.7
H13 7,700      
S60 11,000   100 85.7 100.0
2005年3月29日

変身したか−日本資本主義

 単純な自己防衛のため、一株当たりの利益率を下げて、一般株主に損失を被らせるフジテレビの新株予約権が認められなかったのは当然。コクド−西武鉄道の堤王国崩壊も大事件だが、悪いのは悪いと白黒がはっきりしているのでいまいち面白くない。しかし、老人対若者、既成対革新等々、幅広い切り口があるフジ対ライブは大いにケンケン諤々で酒の肴になって面白い。
 しかし、その意味するところは、今や一部上場の会社−企業が商品となり、金儲けの対象となったことによる日本資本主義の変質であろう。金融市場が財市場を飲み込み、全てを金儲けの対象とする勢いだが、はたして庶民にとってはどうなんだろう。
 市場によって社会が崩壊させられるその先には塗炭の苦しみが待っているかもしれないと言うのに政治は市場原理主義者に乗っ取られ、どうしようもない。
 不動産も、ファンドが大流行だが、ファンドも変身したようです。以前は不動産を組み合わせてファンドを作ったようだが、今はファンドを組んで(金を集めて)不動産を仕入れているようです。結果、粗悪なファンドに庶民が泣き、土地がバブルに踊るかも。

2005年3月


不動産バブルがはじまった?
−ファンドが踊っている−

 ファンドが流行っていますが、それが流行る分だけ土地は高くなってきています。
 都心三区や渋谷区の商業地では、バブルとなっているところがあります。
 土地は利用するものだということで収益価格が重視され、DCF法がもてはやされました。 しかし、鑑定評価でも、バブルの影響を受けてDCF法を適用すると、強気のキャッシュフロー(収益予想)と低いキャップレート(割引率)により高い収益価格が求められます。そして、それが又、市場の加熱をあおることとなります。
 土地を有効利用することと、投機筋にギャンブルの対象とされることは本質的に違いがあります。それが今やギャンブル市場に日本側の投機筋も加わってホットな戦いが繰り広げられています。そして、誰がババを引くのかに注目が集まりだしています。
 投機筋のどこかがババを引いても自業自得だと思いますが、優秀な頭脳がギャンブルに使われたり、ギャンブルの加熱によって実体経済が歪められることには腹が立ちます。
 実体経済が歪められれば当然のこととして公共投資も歪められ、税金が無駄に使われることになります。
 何とかならないものなんでしょうか?
2005年2月

どうする 日本の借金

 日本経済新聞によると2005年度末の国と地方の債務残高の合計は1061兆9000億円と予想されています。
 1万円の新札100万円を0.8pとして約1062qになります。
 東京から新幹線で名古屋、大阪、広島を通過して新下関の一個手前の厚狭駅まで1万円札がぎっしりと線路上に敷き詰められていることになります。秋田新幹線の秋田駅までが670q、東北新幹線の盛岡駅までが約535qです。
 又、05年1月14日現在の東証1部上場企業の時価総額358兆4351億円の約3倍です。
 平成13年10月の人口12,692万人で計算すると一人当たり836万6千円、夫婦子供1人の家庭で2510万円の借金となります。
 信じられますか?とてつもなく莫大な金額です。どうやって返すのでしょう?
 東京都心部では地価が上昇、バブルでは?との声が出ていますが、超々ハイパーインフレの誘惑が忍び寄ってきているのではないでしょうか。
 主権者一同、政治家や高級官僚達の一挙一動をしっかり監視する必要があります。
 借金は天使のささやき、返済は地獄の苦しみです。
2005年1月